インタビュー音源をそのまま文字起こししたって、記事にはなりません。読者に読みやすいように、きちんと「記事」としての体裁を整えるという作業が必要です。
そこで今回は、インタビュー取材後に音源を「記事」にする方法について、私のやり方を少しご紹介します。
今回のポイント
なにはともあれ、まずは文字起こし
どんな体裁の記事にするにせよ、まずするべきことは文字起こしです。
文字起こしの方法はライターによって異なります。私の場合は、自動文字起こし機能を使うことがほとんど。最近は録音と同時に文字起こしをしてくれるアプリやレコーダーがあるので、それを愛用しています。
数年前までは、Googleドキュメントの音声入力を利用し、録音を聞きながらシャドーイングをして文字起こしをする人もいました。
文字起こし、どこまで正確にすればいい?
文字起こしは、一言一句正確にしたほうがいい場合と、ざっくり内容がわかればいい場合があります。
ブックライターや長めのインタビューなど、本人の言葉を極力使うべき案件では一言一句きちんと文字起こししたほうがいいでしょう。そのときは、自動文字起こし原稿を下書きとして、自分で文字起こしを行います。
自分で文字起こしをするときに活躍しているのが、「Okoshiyasu2」というアプリ。再生の速さ調節ができ、再生・停止・早送り・巻き戻しもキー操作だけでできるのでとても気に入っています。
また、短めのインタビューなど、主旨が合えばそれでいい場面などの場合は、自動文字起こしで出力された原稿を使うことも。このあたりは臨機応変にしています。
文字起こしをしたら、どういう体裁の記事にするか決める
文字起こしをしたら、どういう体裁の記事にするかを決めます。記事の体裁は、大きくわけて3つ。
1.その人がしゃべっているように書いたもの
2.地の文とセリフを織り交ぜたもの
3.しゃべり言葉を完全になくしたもの
どれにするかは、自分で決められる場合もあれば、クライアント様に指定されることもあります。
その人がしゃべっているように書くパターン
一人称で書く場合ですね。公開されている記事で、このパターンのものは現在ありません。以前はあったのですが……
地の文とセリフを織り交ぜたもの
インタビューのパターンではこれが一番多いと思います。
>> このほかの事例は「ポートフォリオ」ページで紹介しています
しゃべり言葉を完全になくしたもの
しゃべり言葉を完全になくしたものというと、和樂webに掲載したこの記事が近いかもしれません。
これは、取材協力いただいた方に天然砥石についてお話いただいて、それに私がリサーチた内容も含めて記事化しています。
記事の構成に合わせて、文字起こしの内容を編集する
どんな体裁の記事にするか決めたら、記事の構成を決めます。一般的には時系列に沿って構成するので、そんな難しいことではありません。
ただ、実際に取材をして音源を聞き返していると、話の内容が「A→B→C→B’→A’→C’」というように、あっちにいったりこっちにいったり、ループしたりするケースがあるんですよね。
あるいは、取材の最中にまったく記事のテーマから外れた話が入ってくることも。
そんな場合、そのまま時系列で記事を書いてしまうと、とりとめのない、いまひとつよくわからない内容になってしまう可能性がとっても高くなります。
そこで、必要に応じて「A→A’→B→B’→C→C’」と時系列を前後させ、テーマから外れた内容をばっさり削って……と、文字起こしの内容を編集します。
最後は、インタビュイーチェック!
文字起こしの内容を編集したあとは、記事として読みやすくなるようにさらに体裁を整えます。必要に応じて注釈を入れたり、そのまま記事にするには不適切な言葉を調整することもあります。
そして、最後にインタビューを受けてくださった方に原稿を見ていただき、チェックをしていただきます。
インタビュイーにチェックしてもらう理由
チェックをしていただくのは、内容に間違いがないか、その人にとって不適切な話や表現はないかなどを確認していただくため。
ここで、インタビュイーの方から好意的な言葉が返ってくるとすごくほっとします。
というのが、取材記事って、書いている間ずっと「これでいいのかな、取材対象の方のおっしゃりたいこと、私はきちんと理解して、汲み取って書けているのかな」って不安なんですよ。チェックお願いした瞬間も、「全然だめです」とか言われたらどうしよう?ってめちゃくちゃ怖いんですよ。
チェックバックがあったときも、メール開封するのが怖くて怖くてしょうがなくて、ちょっと意味なく部屋の中うろうろして心落ち着けてようやくクリックできるんですよね。ひどいときはベッドの上にごろごろ寝転がって、ぶつぶつひとりごと言って気持ちを紛らわせながらスマホで開封して薄目でざっと本文を見る、みたいなときも(すごいチキンハートだな)。
その不安や恐怖が解消される瞬間なので、そりゃあもう安心するなんてレベルじゃありません。
そして、チェックバックを確認して原稿を修正・調整し、クライアントに納品する……というわけです。
チェックを省略するケースもあります
なお、速さを重視する報道系の記事の場合は、チェックを省略して記事を公開することもあります。こういうときは、普段のインタビュー記事以上に神経を使います。きちんと録音して、なるべく文字起こしそのままの言葉を使うようにして、言った言わない系のトラブルにならないよう、万一そうなったときもきちんと証拠を示せるようにしています。
インタビュー後の記事作成の流れまとめ
では、最後にもう一度手順をまとめておきます。
1.文字起こし
2.記事の形式を考える
3.文字起こしの内容を編集し記事を作る
4.インタビュイーにチェックしてもらう
この流れでやれば、インタビュー記事ができます。ライターの方はもちろん、社内広報などでインタビュー記事を作らなければいけない方の参考になれば幸いです。