ちょっと前に、体験談を使った記事型広告が違法だとして、広告代理店と広告主が逮捕されたというニュースがありました。
ということで、今回はこういう健康食品のライティングについてちょっとお話しようと思います。
今回のポイント
健康食品のライティングには「薬機法」による制限がある
健康食品のライティングをする場合、必ず意識しなければいけないある法律があります。
それは、薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)。少し前までは「薬事法」とも呼ばれていました。
薬機法そのものは、その名のとおり医薬品や医療機器等の品質や有効性・安全性を確保するために必要なあれこれを細かく定めたもの。一見、医薬品ではない健康食品などには関係がない……?と思われそうですが、実はそうではありません。医薬品でない、医薬部外品、化粧品、そして健康食品についてもその定義や広告の表現についてもきちんと決められています。
ということで、健康食品や化粧品関連のライティングをするライターにとっては、知っておかなければいけない法律のひとつなのです。
健康食品の「効果」を謳うのはNG
薬機法の細かい説明や解説は、弁護士さんなどの専門家にまかせるとして、私の経験から健康食品や化粧品のライティングについて少しお話しします。
健康食品のライティングをする際、気をつけなければいけないことは「効果があるような表現をしないこと」です。「こういう効果がありますよ」と言えるのは、医薬品だけ。健康食品や化粧品については、効果を謳ってはいけません。なぜなら、医薬品でないから。まず、これを抑えておくのが大前提です。
以前、健康食品(サプリメント)のオウンドメディアのライティングをしたことがあるのですが、このときに最も気をつけていたのがこの部分でした。
その案件では主に、サプリメントの原材料とそれに含まれる成分の効能を説明する記事を書いていました。専門の医師のインタビューや簡単な専門書・論文を読んで、きちんとデータや事実に基づいた内容の文章を書くのですが、それでも、「効果があります」という言い方はできませんでした。クライアント様の法務担当からNGが出ました。
「このサプリメントの原材料に含まれているこの成分は、こういうはたらきがあるといわれている。こういう実験を行ったところこういう結果が出たという論文があるので、ここから、こういうことではないかと思われる」
みたいな、ちょっ回りくどい、やんわりとした書き方をしないとOKが出ないんですね。
どういうことかというと、たとえばダイエット用のサプリがあるとして「このサプリには痩せる効果があります」と効果を謳うのはアウト。「このサプリにはこういう成分が含まれています。この成分は、脂肪燃焼を促す働きがあるといわれています。というのが、この成分についてはこういう研究が行われていて、そこでこういう結果が出たから、こういうことだろうと推測されるからです」みたいな言い方ならセーフ、みたいな感じですね。
だいたい1記事5000字くらいの文字数で書いていたのですが、それならこれくらい丁寧に書くこともできます。
ただ、問題は、もっと短い文字数で収めなければいけない商品ページやキャッチコピーなどのライティングです。
サプリではよく「●●をサポート」みたいな表現を見かけますが、まさにこういう「サポート」みたいな表現が精一杯なんですね。
あとは、「ダイエットに燃えるあなたに」とか「燃えろ!私のダイエット魂」みたいな感じで、はっきりと言わないけど、なんとなーく何かが燃えそうなイメージを出したりとかもします。このあたり、いろんな広告の表現を見ると面白いと思いますので、見てみてください。効果があるとは一切言わず、だけど効果があるように思わせる表現がたくさんあります。
なお、効果を謳っているのもたまーにありますが、そういうところは多分薬機法を知らないんだろうなあと思います。
体験談を使ってもいけません
とまあ、こういう風に表現に制限がかけられていたものですから、一昔前はお客さまの声なんかを使って効果っぽいものをアピールしようとしていたときがあったんですね。
「このサプリを飲み始めて1ヶ月。ちょっと運動するだけで汗がばーっと出て、体重もマイナス1.5kg!きつかったデニムもちょっと余裕が出てきました♡もっと頑張って、目標のマイナス5kgを達成できるようにがんばります!」
みたいなお客さまの声を書くわけです。
なお、お客さまの声であっても、明確に効果を謳うのはNGでした。上記の例もは今適当に作ったのですが、明確に効果を謳っていない……と思います。でも、ちょっと自信がありません。もしかしたらNGかもしれません。このあたりのライティングは正直不得意なので、NGだった場合はごめんなさい。
閑話休題。
このように、お客さまの声や体験談で抜け道をなんとか作ろうとしていたわけなんですが、現在はこの方法も禁止されています。冒頭に紹介した事件はまさにこれで、やってはだめなのに体験談を使った広告を作ったから逮捕された、というわけです。
化粧品には使えない表現がたくさんある
こういった表現に細かな制限がかかるのは、健康食品だけではありません。化粧品も同様です。
化粧品はもっと細かいというか、使っていい表現がかなり限定されます。たとえば「美白」はNGになるけれども、「透明感」「くすみをとる」というのはOKになる場合がある(NGである場合もあります)みたいな感じです。どんな表現がOKでNGかは、その都度リサーチして確認しなければいけません。
さらに、こういうOK表現を使ったとしても、よくよく調べたら別の化粧品メーカーがすでにその表現を使っていた……なんてケースもあったりします。そのため、化粧品のライティングをする際には「薬機法に照らしてOKか」の次に「競合メーカーが使っていないか」をチェックする必要も出てきます。実際「これなら大丈夫」と出したキャッチコピーが、競合メーカーとほぼかぶっていてクライアントさまに叱られた経験があります、私。
こういった事情から、私は基本的に化粧品系のライティングは行いません。正直いって、私の手に負えないんです。もともとコスメにもあまり興味がないし詳しくないので……クライアントさまにとっても迷惑になる可能性が高いですしね。
きちんと知識をつける努力が必要
冒頭に紹介したニュースのような、広告表現の制限を知らない、あるいは無視する健康食品・化粧品のメーカーや販売会社は確かにあります。実際私も、薬機法を理由にライティングをお断りしたところ「うちは小さい会社だから大丈夫。そんなの気にしないで大丈夫だから」と言われたこともありました。健康食品や化粧品の広告を見ていると「この表現ってありなの?」とびっくりするようなものも少なくありません。
ですが、やはり法律は法律なので、ちゃんと守っておいたほうがいいですよね。万一こちらが書いた文章でクライアントさまの不利益が発生したら……と思うと、怖い怖い。
それに、薬機法は本来、いろんな人たちの健康を守るためのもの。これをないがしろにしてしまうと、購入者の方に不利益を与えるリスクもあります。また、ないがしろにする会社が増えると、回り回って自分や自分の家族、知り合いが不利益を被るリスクだって大きくなってくるのではないでしょうか。
クライアントさまもライターも安心してお仕事ができるよう、購入者の方に安心して買っていただけるよう、ある程度の知識を持ってお仕事はするべきでしょうね。
以上、ニュースを見ての雑感でした。