去年、京都にある恵文社という書店で「本とその周辺をめぐる6か月ちょっとの旅」というワークショップに参加しました。このワークショップの内容は、簡単に言うと「参加者で短編小説書いて本にしましょう」というもの。それから約1年。6か月ちょっとという予定を少し(!?)オーバーしたものの、なんとか本ができそうな状態になっています。いえ、まだ本当は出るのはもう少し先なんですけどね。ただ、もう最終稿はできています。
先日、最終稿のゲラチェックを行いました。今まで、電子含めて書籍の仕事をしたこともあるので、ゲラのチェック自体は初めてのことではありません。しかし、自分の文章のチェックは初めての経験です(文章というのは「思いや考えを文字化する」ということであり、私がしているようなライターの仕事は「他人の文章を書く」ものだと捉えています)。だから、嬉しいやら恥ずかしいやら。あら、私こんな文章書いていたのねと時々思いながら、ちょっと新鮮な気持ちで読んでいました。
思ったのですが、小説というのは、自分の考え方、価値観、世界観がものすごく顕になってしまう世界なのでしょう。たとえば、キャラの一人ひとりは間違いなく私とはもちろん、私を取り巻く人たちにもちょっと似ている。今まで出会ったいろんな人たちの性格や考え方が、少しずつ配合を変えて生まれたものなんですよね。性格も、考え方も、行動も。街の風景もやっぱり私が知っている街に似ているし。
……取材の手間かけてないだけでしょ、と言われると「はいその通りです」と頭を下げざるを得ないのですが、でもたぶん、物語のための取材というのも結局は自分の世界を広げる行為なのではないかなあと思うのです。
学生時代、森瑤子さんのエッセイや小説を大量に読んだことがあります。今でも印象に残っている言葉に「小説は、根も葉もある嘘である」があります。根や葉がある嘘だから、本当らしく思える。なるほど!とはっとしました。私はちゃんと、根も葉もある嘘をつけたかな、と原稿をチェックしながら考えておりました。
さて、この本は7月に発売されます。京都のある書店と、あとはインターネット販売もするそうです。また発売日が近くなったらお知らせしますね。