ライターの仕事は、いちから記事を書くものばかりではありません。自分の、あるいは他人が書いた文章を書き直す「リライト」案件もあります。
一時期、キュレーションサイトのコピペが問題視された時期があったことから「他人の原稿をバレないようにコピペする」と思われることも多いリライト作業。しかし実は「リライト=コピペ改変」ではありません。
今回は、リライトという仕事についてちょっとお話ししようと思います。
今回のポイント
【大前提】コピペがだめな2つの理由
まず、大前提のお話として、なぜ他人の文章をコピペしてはいけないのかについて改めて確認しておきましょう。
1.他人の著作権を侵害しているから
著作権とはなにか、という話ですが、私はひとことで言うと「自分で創作したものを他人に勝手に使われないための権利」と捉えています。おそらく法律的に言うとさらに細かなことになると思うのですが、とりあえずこんな感じです。
「創作」と聞くと小説やイラスト、漫画などを想像する人も多いでしょう。しかし、それだけではありません。文章もそうですし、写真や映像(動画)もそうです。
人の創作物、作ったものを勝手に使ってはいけない。使うなら、安易にコピペするのではなく、きちんとその内容やエッセンスを理解し、自分なりにまとめて、自分の言葉でアウトプットしましょう、ということだと私は捉えています。
このあたりは、文化庁のサイトに詳細が書かれていますので、参考にどうぞ。
2.Webメディアの場合は、SEO的に不利になることも
これはWebメディアやサイト、ブログなどのオンラインの話になるのですが、いわゆるSEO対策ってありますよね。検索結果の上位に表示されるためにやる、いろんな方策です。コピペはSEO的に不利になるといわれています。
SEO対策については説明するとキリがないので、ざっくり、めちゃくちゃざっくり言うと、Googleの検索エンジンは「信頼できる人が発信している、役立つオリジナルコンテンツを検索結果の上位に表示しよう」としています。
なぜか。検索したときに、役立つコンテンツがなかなか見つからないと、「この検索エンジンって役に立たないな」と思われます。Googleとしては、こうなるのは避けたいんですよね。「やっぱりGoogle!検索したら知りたいことがすぐに見つかる!」といわれるような検索エンジンになりたいわけです。
ということは、どこの誰かが適当にコピペしたサイトなんて、上位に表示したくありません。なので、コピペサイトはSEO的に不利、といわれているのです。
じゃあ、リライトってどうやればいいの?
なるほど、コピペやコピペ改変はやっちゃだめなのか。じゃあ、いったいリライトってどうやったらいいの? リライト案件に求められていることっでどうなの? って話を続けてしていきましょう。
一番安心なのは、自分が書いた文章のリライト
一番安心なのは、自分が書いた、すなわち自分が権利を持っている文章のリライトです。
メディアのほうから「以前書いていただいたこの記事をこうリライトしていただけますか」と依頼されたらもう安心してリライトできるのですが、まあこういうことはまずありません。
次に安心なのは、クライアント(メディア)の文章のリライトです。とはいえ、これにはちょっと心に留めておきたいことがありまして……
リライトと著作者人格権
厳密にいうと、書いた文章を改編する権利は「著作者人格権」の中のひとつ「同一性保持権」にあたると思います。要するに「自分が書いた文章を勝手に変えられない権利」ですね。
そして、これがとても重要なことなのですが……「著作者人格権」は譲渡できません。
つまり、ライターが書いた文章の著作権はメディアに譲渡することができますが、著作者人格権は譲渡できない、つまりずっとライターが持つ権利なのです。
平たく言うと、「私が書いた文章を、私の承諾なく書き換え(リライト)しないでください」というのが著作者人格権なんですね。
となると、メディアは困ります。なぜなら、最初に文章を書いたライターに許可を得ないとリライトができないからです。そのため、メディアはリライトを視野に入れて「著作者人格権を行使しない」つまり「後日リライトしても文句はいいませんよ」という一文を契約書に入れていることが多いです。
内容は変えず、構成や文章をまるっと変えて新しい記事にする
他のサイトの文章を参考として提示され「こんな感じの記事を書いてください」と言われた場合はどうするか。
このときにすべきことは、内容はそのままに、文章をごっそりと変えることです。場合によっては10割、つまり、まったく違う文章にしてしまうこともあります。構成から変えてしまってもいいでしょう。
つまり、「ちょっと変えればいい」のではなく、「同じ内容の、まったく違う文章をイチから書き上げる」行為ですね。リライトというよりはほぼ新規の文章作成になると思いますが、こういうこともあります。気持ちだけ語尾や言葉を書き換えるよりは、ずっといいです。まずは「コピペ」と言われないでしょう。
いわゆる「ネタパク」はあり?なし?
とはいえ、このやり方はコピペでないとしても、ネタをパクった、俗に「ネタパク」といわれるようなページができてしまうリスクがあります。
ネタやアイデアは著作権の保護対象外です。ですから、こういう行為に対して「ネタやアイデアは著作権の侵害にならないからOK」という人もいます。
私は法律の判断については当然素人なので、これに関してはなんとも言えません。ただ、法律関係ない範囲で言うならば、ネタパク、アイデアパクは、一般の人からは好意的に見られることはまずありません。できれば、ネタやアイデアもかぶらないほうがいいでしょう。
とはいえ、どうしてもかぶりがちな定番のネタやテーマもあるので、ここはケースバイケース。たとえばアプリやソフト、サービスの解説記事なら内容がかぶることも多いでしょうしね。
とくにSEOでは、検索ワードがかぶれば内容もかぶりがちです。こういうときは切り口を変えたりそのメディアならではの視点を入れるなどして独自の記事になるよう企画します。
実際に私がやったリライト例
最後に、私が実際にやったことがあるリライトの例をいくつか挙げておきます。
サテライトサイトにメインサイトの記事をリライトして流用
サイトAを運営している企業が、サテライトサイトをオープンすることになりました。サイトAとBではターゲットが違ったので、Aに掲載していた記事の切り口や商品・サービスの訴求ポイントをBのターゲット向けに変えてリライトし、Bにも掲載しました。
サイトリニューアルに合わせて既存の記事をリライト
サイトリニューアルに合わせて、掲載している記事を見直し。最新の情報を盛り込み、SEOフレンドリーな構成にした上でリライトしました。
個人事業主のブログのリライト
個人事業主が集客目的で運営していたブログ。日常の雑記が多くとりとめもなく書いていた記事を、集客力強化のためリライトしました。対策キーワードを改めて洗い出し、日常の話題を減らし、集客に役立ちそうな部分を膨らませ、再構成して記事を作成しました。
オウンドメディアの既存記事のリライト
オウンドメディアの既存記事のリライトです。リライトといっても、この案件では既存部分には一切手を付けず、新章を追加する程度にしています。これだと、前に書いた方の著作者人格権を侵害しないのでいい方法ですね。
リライトをするときには権利関係に気を付けよう
今回はリライトについての話でした。
リライトはやりようによっては他者の権利を侵害してしまうことがあるので、権利侵害にならないかに気をつけてやっていきましょう。
なお、このサイトのブログ記事も自分で何度かリライトしています。この記事もそうです。自分の文章のリライトなら何度やっても権利侵害にはならず、単なるブラッシュアップですね。こういうのは安心です。
では、今回は以上です。